卸売業の倒産を避けるには

 いわゆる新型コロナウイルス感染症の影響は薄まってきましたが、2024年はゼロゼロ融資の弁済が開始したことや、物価高・人件費高騰などの影響を受け、倒産件数が大きく増える時期となりました。

 このため、卸売業者においても、倒産・破産を回避するための取組み・事業改善が必要とされる時代が来たといえます。以下では、卸売業が倒産を避ける方法と、仮に倒産・破産をするとした場合の流れについてもご説明をしていきます。

キャッシュフローの最適化

 まず、倒産を避けるために最重要なのが、キャッシュフローを最適化して資金繰りを改善することでしょう。

 卸売業の場合、販売売上は出るものの、原価高騰・物価高騰の影響を受けて実際に利益率を維持することができないこともあります。最近は、めまぐるしく変化する海外情勢の影響を受けて輸入・輸出における向かい風にさらされる場合もあります。

 こういった問題に負けることのないよう、安定経営のためにキャッシュフローを最適化するよう検討を重ねることが重要です。

取引先の与信管理

 次に、取引先の与信管理が重要です。

 卸売業においては、卸売りの売買ルートに乗る他の会社が倒産したり支払を怠ったりすることで、自社の資金ショートから破産に至る会社が多いです。そのようなことのないように、取引先の与信状況を適時に確認して管理することが重要となります。

 また、与信状況が怪しい・不明瞭な会社との取引は、そもそも避けるべきともいえます。君子危うきに近付かずの精神が肝要でしょう。

金融機関との関係づくり

 また、資金ショートに至ることを避けるため、キャッシュフローを安定させるために、金融機関との関係づくりを進めておくことも重要です。

 緊急時に金融機関からのつなぎ融資を受けることができるようにするためにも、普段・平時からの関係づくりができていることが必要です。困ってしまう前から地場の地銀・信用組合を始めとした金融機関とのパイプ構築に努めましょう。

顧問弁護士との連携

 ちなみに、顧問弁護士との連携を進めていると、倒産予防のための様々な情報・助言を得ることもできます。顧問弁護士が、法人破産の依頼を受けた経験が豊富な弁護士であればなおのこと、どのような部分に留意すれば倒産・破産に至るリスクを減らすことができるのか見えてくるはずです。

 また、売掛金の回収なども、顧問弁護士が居た方が適切に行えますので、実際上の問題としても、すぐに対応を取ってくれる顧問弁護士が居た方が破産しにくいといえるでしょう。

卸売業の倒産・破産が発生する要因とは?

 卸業の倒産・破産が発生する要因としては、一般に、以下のようなものがあるといわれます。

取引先の倒産・支払遅延

 第一に、取引先の倒産や支払遅延の影響を受けることが挙げられます。

 昨今は破産件数が増加している状況にありますから、生産者や製造者などが倒産する事態も珍しくありません。特に取引のルートが多くない卸売業者であればあるほど、こういった事態にあった場合には売上・利益が大きく減少してしまうことになります。

 そうなると、キャッシュフローに余裕がなければすぐに倒産・破産に至ってしまうのです。

不良在庫の抱え込み

 第二に、不良在庫の抱え込みの問題が挙げられます。

 卸売業者であれば、多かれ少なかれ、売れない・売れ残った不良在庫を抱えることは避けがたく、その放出に苦労することになります。しかしながら、この問題を放置して抱え込みが拡大していくと、利益減少・在庫圧迫を招いて倒産に繋がることになってしまいます。

人手不足

 第三に、人手不足の問題が挙げられます。

 人手不足の問題は、卸売業者の営業量・販売量に直結する問題で、売上・利益の減少も招いてしまいます。昨今は、どの業態においても人件費高騰の問題を抱えて悩む上に、タイパ・コスパを重要視するZ世代の新入社員を獲得することにも悩まされる状況があります。最近は売り手市場傾向が強まってきているといえます。

卸売業の倒産・破産における注意点

 ちなみに、卸売業者が倒産・破産する場合には、以下のような点にも注意が必要となります。

取引先への対応

 まず、取引先への対応が必要となります。卸売業である以上、自社が倒産した場合に、取引先への影響は、即日出てしまいます。倒産をする日や倒産を明らかにする日までに、取引先への対応方針を決定しておくことが重要でしょう。

商品在庫と担保権の確認

 また、商品在庫と、担保権の確認も必要になります。

 在庫品に生鮮食品があれば早急に売却する必要がありますし、冷凍品があれば冷凍庫の継続利用が可能か検討する必要もあります。また、商品に担保権(いわゆる集合動産譲渡担保)が付されている場合には、勝手に商品を処分・売却することもできませんから、この点のチェックも必須となります。

 担保権の有無は、破産申立て時に裁判所に報告することとなります。

債権回収

 売掛金が存在することも多いので、債権回収業務を破産前に済ませておくべき場合もあります。少なくとも弁護士に相談し、請求書を送付する必要があるでしょう。

従業員への対応

 最も重要なのは、従業員への対応になります。従業員は、破産手続前に解雇しておくことが一般的なので、社会保険の切替え、離職票の交付、住民税の普通徴収への切替え等の手続をする必要が出てきます。

 この際には、普段お世話になっていた社会保険労務士・税理士などの協力が必要不可欠です。

卸売業の倒産時の流れ

 ここで、卸売業の倒産時の流れについてもご説明します。

倒産の決断

 最初に、経営者によって倒産を決断することが必要となります。

 会社の資金繰りを見ながら苦渋の決断をしなければならない場合もあるでしょう。

弁護士へ相談

 次に、弁護士に相談することが必要です。特に法人が破産する場合には、弁護士への破産手続の依頼は必須となります。

 ぜひ、法人破産になれている弁護士にご相談・ご依頼いただくことをお勧めいたします。

会社財産の整理と証拠の確保

 破産手続の準備のためには、会社財産の整理と証拠の確保も欠かせません。

 会社財産について証拠を踏まえて整理しながら、弁護士が破産手続申立書を作成していくこととなります。この際には、商品や在庫品を他社に取られることのないように、特に共同利用している倉庫で他社に所有権を主張されないように、所有していることの証拠を確保しておくことが肝要です。

債権者との協議

 また、債権者との協議・交渉は全て弁護士に任せてしまえます。

 債権者・取引先からの請求の連絡はあなたやあなたの会社に届くことはなくなりますので、精神的な安定は得られます。

倒産手続

 以上の準備が整った段階で、裁判所に破産手続の申立てをすることとなります。裁判所は、破産手続開始決定を下すのと同時に、破産管財人の選任決定も出します。破産管財人は、倒産した会社の財産状況を調査し、残った財産を全て現金化して配当処理する弁護士です。

従業員への対応

 倒産後に、破産管財人から従業員への対応を取ってもらうことになります。

 未払給与のうちの一部は公的機関から補填される可能性があります。この補填手続も破産管財人が行うこととなります。

卸売業の企業が破産・倒産を弁護士に相談するメリット

 最後に、卸売業の企業が破産・倒産する場合に弁護士に相談するメリットをご紹介します。

倒産手続をスムーズに進められる

 まず、倒産手続をスムーズに進められます。法律の専門家である弁護士の援助を適切に受けることで、倒産処理のためのストレスを緩和しましょう。

債権回収がしやすい

 また、債権回収も弁護士に依頼した方がしやすくなります。単純に請求書を出すだけでも、弁護士によるものか否かで差があります。

訴訟に対応できる

 更に、弁護士に相談すれば、債権回収等のための訴訟も選択することができます。これはまさに弁護士ならではの手法といえるでしょう。

まとめ

 以上のとおり、卸売業の倒産についてご説明しました。当事務所は法人専門で倒産処理を行う事務所です。ぜひ、お困り・お悩みの際には、当事務所に一度ご相談ください。