「今月の支払いが間に合わない」「スタッフが次々と辞めてしまい、運営が立ち行かない」

訪問看護ステーションを経営するなかで、このような不安を抱えていませんか?

  • 資金繰りが限界で、給料や業者への支払いが遅れている
  • 倒産したら利用者への責任や自分の生活がどうなるのか怖い
  • まだ立て直せるのか、それとも諦めるべきかの判断がつかない

訪問看護は利用者の命に直結するため、一般企業以上に「辞め方」が重要です。

結論からお伝えすると、これ以上資金繰りが続かないと判断した場合は、傷口が広がる前に弁護士へ相談することが最善の策といえます。

なぜなら、無理な延命は利用者や従業員に多大な迷惑をかけるだけでなく、経営者個人の再起さえも難しくしてしまう可能性があるためです。

本記事では、訪問看護の倒産が急増している背景から、具体的な手続きの流れまでを詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 倒産・破産の前兆となる危険なサイン
  • 訪問看護特有の破産手続きとスケジュール
  • 経営者が問われる法的責任とリスク
  • 倒産前に絶対にやってはいけないNG行動

【記事のまとめ】

訪問看護ステーションの倒産が急増していますが、資金繰りが限界なら無理な延命は避け、早期に「破産」をはじめとした選択肢につき弁護士に相談すべきです。適切な法的整理を行うことは、利用者の安全な引継ぎなどの責任を果たし、経営者個人の生活再建にも繋がります。逆に、特定の債権者への優先払いや高金利の借入は、事態を悪化させる絶対に避けるべきNG行動です。一人で抱え込まず、専門家の支援を受けて適切な幕引きと再出発を目指しましょう。訪問看護の倒産・破産に関するお悩みは、弁護士法人グレイスへご相談ください。初回相談は無料です。

お問い合わせはこちら>>

訪問看護ステーションの「倒産」「破産」が急増している背景

近年、訪問看護ステーションの倒産や休廃業が過去最多のペースで増加しています。

かつては「成長産業」「利益が出やすい」と言われた訪問看護業界ですが、市場の成熟とともに競争が激化し、経営環境は厳しさを増しています。まずは、なぜ今、訪問看護の倒産が増えているのか、その背景にある構造的な問題を解説します。

訪問看護業界の倒産件数の推移と現状

一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、令和6年度中の「訪問看護ステーション」の休止が355件、廃止が886件といずれも過去最多となりました。

訪問看護ステーションは過去最高の開設数ですが、業界特有の複雑な制度や人材管理の難しさに適応できず、事業が軌道に乗る前に資金がショートしてしまうケースが発生していることが考えられます。

出典:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r7-research.pdf

診療報酬改定の影響

訪問看護ステーションの経営は、診療報酬・介護報酬の改定内容にその命運を左右されます。 2024年度(令和6年度)に行われた「診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬」のトリプル改定から約1年が経過し、2025年現在、その影響が「経営体力の消耗」という形で多くの小規模事業所を直撃しています。また、2025年度の薬価改定や賃上げ対応も、収益圧迫の要因となっています。

特に、理学療法士等による訪問看護の評価見直し(減算の強化)などは、リハビリ特化型で収益を上げていたステーションにとっては大きな打撃となりました。

報酬単価の変動は、そのまま利益率の低下に直結します。これまでギリギリの収支で回していた事業所が、この改定を機に赤字転落し、倒産に至るケースが増えているのです。

出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html

2026年改定に向けた議論:さらなる「淘汰」の予兆

すでに厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)では、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定に向けた議論が始まっています。 現在の議論のトレンドは、以下の通り「厳格化・大規模化」の方向へ進んでいます。

  • 「過剰訪問」への規制強化: 一部の事業所で見られる頻回な訪問や、不適切なリハビリ訪問(いわゆる「9割引きのマッサージ」批判)に対し、さらなる適正化・規制強化が検討されています。
  • 大規模化・多機能化の推進: 小規模事業所の乱立を防ぎ、地域で安定したサービスを提供できる「大規模法人」を優遇する評価体系へのシフトが予想されます。

2026年の改訂によって厳しい状況に追い込まれる事業所も出てくることが考えられます。

出典:厚生労働省「第580回 中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001193293.pdf

訪問看護特有の「構造的な倒産要因」

外部環境の変化だけでなく、訪問看護というビジネスモデル自体が抱える「構造的なリスク」も倒産の大きな要因です。

看護師の採用難・離職率の高さと高騰する紹介手数料

訪問看護経営の最大のリスクは「人」です。

中央社会保険医療協議会の資料によると、規模別の訪問看護ステーションの看護職員数は令和6年度で5人以上の訪問看護ステーションの割合が46.2%と増加傾向にあります。

出典:中央社会保険医療協議会 調査資料「在宅(その3)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001594226.pdf

看護師の有効求人倍率は常に高く、採用難易度は極めて高い状態が続いています。そのため、多くの事業所が人材紹介会社を利用せざるを得ません。

紹介手数料の相場は年収の30%〜35%程度と言われており、看護師1人を採用するために100万円〜150万円以上のコストがかかります。

なけなしの資金で採用した看護師が、現場のミスマッチや人間関係ですぐに早期退職してしまった場合、紹介料の返金規定期間を過ぎていれば、そのコストはすべて無駄になります。この「採用貧乏」に陥り、キャッシュフローが悪化して倒産するパターンが後を絶ちません。

人員基準(常勤換算2.5人)割れのリスク

訪問看護ステーションの指定要件には「常勤換算で2.5人以上の看護職員」という人員基準があります。

また、指定訪問看護ステーションの場合、看護体制強化加算が適用されるためには、従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上である必要があり、看護職員の確保が重要となります。

小規模なステーションでは、主力スタッフが1人辞めるだけでこの基準を割ってしまうことがあります。

基準割れを起こすと、減算対象になるだけでなく、改善が見込めなければ指定取り消しや営業停止処分の対象となります。つまり、経営状態が黒字であっても、スタッフの確保ができなければ強制的に事業を継続できなくなるリスクがあるのです。

損益分岐点に達するまでの運転資金不足

訪問看護は、開業してすぐに利用者が集まるわけではありません。

ケアマネジャー(介護支援専門員)や地域の医療機関への営業を行い、信頼関係を築いて少しずつ利用者の紹介を受けます。

損益分岐点とされる利用者数(一般的にレセプト枚数で40〜60件程度)に達するまでには、半年から1年以上の時間がかかることも珍しくありません。

この期間の人件費や家賃を賄えるだけの十分な運転資金を用意せずに開業してしまい、利用者が集まる前に資金が底をついて倒産するケースが非常に多いのです。

危険信号を見逃さない!訪問看護ステーション破産の予兆とチェックリスト

倒産はある日突然起こるものではありません。必ずその前段階で「予兆」が現れます。

経営者がこのサインを早期に察知し、対策を打てるかどうかが、再建できるか破産に至るかの分かれ道となります。以下のチェックリストで自社の状況を確認してください。

財務面で現れる危険サイン

財務状況の悪化は、数字として明確に現れます。

現預金が月商の1.5ヶ月分を下回っている

訪問看護(介護保険・医療保険)の入金サイトは、サービス提供から約2ヶ月後です。

そのため、手元には常に「2ヶ月分の運転資金」があるのが理想です。もし現預金が月商の1.5ヶ月分を下回っている場合、突発的な出費や入金の遅れに対応できず、資金ショートを起こす危険性が極めて高い状態です。

請求から入金までのタイムラグに耐えられない

国保連や支払基金からの入金までのタイムラグを埋めるために、「ファクタリング(介護報酬債権の早期資金化)」を利用する事業所も多いでしょう。

しかし、手数料の高いファクタリングを恒常的に利用し、その入金ですら支払いがギリギリになっている場合は、すでに自転車操業の状態です。一度でも入金サイクルが狂えば、即座に倒産の危険性が高まります。

税金や社会保険料の滞納が始まっている

消費税、法人税、源泉所得税、社会保険料の支払いが遅れ始めたら、末期症状です。

特に公租公課(税金や社会保険料)の滞納に対する行政の処分は厳しく、銀行口座の差押えなどが行われると、事業継続は事実上不可能になります。

「税金の督促状が届いている」という状況は、赤信号と考えてください。

給与遅配・支払い遅延が発生している

「今月の給料、少し待ってくれないか」「来週には払えるから」

従業員に対してこのような言葉が出そうになったら、もはや経営者としての限界です。

給与の遅配は、従業員との信頼関係を一瞬で破壊し、一斉退職を招きます。これが起きた時点で、自力での再建はほぼ不可能に近いと認識すべきです。

組織・運営面で現れる危険サイン

数字に出ない現場の空気も、重要な倒産のサインです。

管理者の退職やスタッフの連鎖退職

訪問看護ステーションの要である「管理者」が辞める、あるいは創業メンバーなどの古参スタッフが辞める場合、組織内部で深刻な問題が起きている証拠です。

1人が辞めると、「あの人が辞めるなら私も」と連鎖退職が発生しやすく、あっという間に人員基準割れに追い込まれます。

新規利用者の獲得数が停滞・減少している

地域のケアマネジャーからの紹介が減っている場合、サービス品質への悪評が立っているか、営業活動が疎かになっている可能性があります。

既存利用者の入院や死亡による終了(ターミネーション)は避けられないため、新規獲得が止まれば売上は右肩下がりに落ちていきます。

レセプト(請求)業務の遅延や返戻の増加

請求業務担当者が辞めてしまったり、現場が忙しすぎて記録が追いつかず、レセプト請求が期限に間に合わない、あるいは返戻(差し戻し)が増えている状況も危険です。

請求ができなければ入金はありません。管理体制の崩壊は、直後の資金難に直結します。

資金繰りが限界の時に検討すべき「破産」と「法的整理」の種類

資金繰りが限界に達し、事業の継続が困難となった場合、法的に借金や負債を整理する手続きが必要です。これを「法的整理」と呼びます。

状況に応じていくつかの選択肢がありますが、訪問看護ステーションの多くが選択するのは「破産」です。

法人破産(会社そのものを消滅させ債務をゼロにする)

裁判所に申立てを行い、会社の財産をすべて処分してお金に換え、債権者に配当した上で、会社を消滅させる手続きです。

これにより、会社が抱えていた借入金や買掛金などの債務はすべて消滅します(法人が消滅するため)。

再建の見込みがなく、負債が大きすぎて返済不能な場合に選択される、最も一般的な「倒産」の手法です。

民事再生(事業を継続しながら債務を圧縮する)

事業自体は継続しながら、借金を大幅に減額してもらい、再生計画に基づいて返済していく手続きです。

しかし、民事再生を行うには「事業に将来性があり、黒字化の見込みがあること」「スポンサーなどの資金援助があること」などが条件となります。

信用が第一の訪問看護事業において、一度「倒産騒ぎ」を起こした事業所が利用者を維持することは難しく、また小規模な事業所では手続き費用(予納金など)が高額になるため、現実的には選択されるケースは稀です。

訪問看護ステーションの「破産手続」の流れとスケジュール

訪問看護ステーションの破産は、一般的な企業の破産と異なり、「利用者の命と生活」を守るための手続きが必須となります。

ここをおろそかにすると、行政処分や損害賠償請求に発展する恐れがあります。

典型的な破産手続きの流れを見ていきましょう。

弁護士への相談と受任通知の発送(督促の停止)

まず最初に行うべきは、倒産案件に強い弁護士への相談です。

弁護士に依頼し、弁護士から債権者へ「受任通知(介入通知)」を送ることで、債権者からの取り立てや連絡がストップします。

これにより、経営者は精神的な落ち着きを取り戻し、今後の対応に集中できるようになります。

利用者・家族への説明と引継ぎ先の確保

訪問看護における最重要プロセスです。

事業停止のXデーを決めたら、その日までにすべての利用者を他の訪問看護ステーションへ引き継がなければなりません。

利用者の安全を守る法的・道義的責任

突然「明日から来られません」とサービスを打ち切ることは許されません。

医療依存度の高い利用者(人工呼吸器装着者やターミナル期の患者など)の場合、訪問看護の途絶は命に関わります。

安全配慮義務の観点からも、責任を持って引継ぎ先を確保する必要があります。

近隣事業所やケアマネジャーへの連携依頼

担当のケアマネジャーに事情(閉鎖すること)を説明し、新しい訪問看護ステーションの選定を依頼します。

また、近隣の同業者にも協力を仰ぎ、利用者の受け入れをお願いします。

この際、混乱を避けるために「破産」という言葉を使うか、「諸事情による閉鎖」と伝えるかは、弁護士と相談して慎重に決める必要がありますが、基本的にはケアマネジャーへの誠実な説明が不可欠です。

従業員への解雇予告と説明会の実施

利用者対応と並行して、従業員への説明を行います。

解雇予告:解雇・退職・雇用保険の扱い

原則として、解雇の30日前までに予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

しかし、破産の場合は即時解雇となるケースが多く、解雇予告手当も払えないことがほとんどです。

この場合、労働基準監督署で「解雇予告除外認定」を受ける等の手続きが必要になることもありますが、実務上は「破産による解雇」として処理を進めます。

従業員が失業保険(雇用保険)をすぐに受給できるよう、離職票などの書類作成を迅速に行うことが、せめてもの誠意となります。

説明会の実施:未払い給与・退職金はどうなるのか

全従業員を集めて説明会を開き、破産に至った経緯と謝罪、そして今後の処遇について説明します。

最も紛糾するのは「未払いの給料や退職金」についてです。

会社に資産がない場合、全額の支払いは約束できません。後述する「未払賃金立替払制度」を利用してもらうことになる旨を丁寧に説明し、理解を求める必要があります。

ここで感情的な対立が激化すると、労働基準監督署への通報やトラブルに発展するため、弁護士の同席が望ましい場面です。

行政機関への「廃止届」「指定辞退届」の提出

介護保険法および健康保険法に基づき、事業の廃止を届け出る必要があります。

都道府県・厚生局への提出タイミング

原則として、事業を廃止する日の「1ヶ月前」までに、都道府県知事(および地方厚生局)へ「廃止届・指定辞退届」を提出しなければなりません。

しかし、破産のような緊急事態では1ヶ月前の提出が間に合わないこともあります。

その場合でも、事後報告ではなく、可能な限り速やかに所管の役所へ相談し、指示を仰ぐことが重要です。無断で閉鎖すると、後の手続き(開設者の変更など)に悪影響を及ぼす可能性があります。

裁判所への破産申立てと破産管財人の選任

利用者と従業員の対応、行政への届出等の目処が立った段階で、裁判所へ正式に「破産手続開始の申立て」を行います。

裁判所が破産開始決定を出すと、「破産管財人(裁判所が選任する弁護士)」が選ばれます。

これ以降、会社の財産管理権はすべて管財人に移ります。

債権者集会と手続きの終結

破産管財人は、会社の資産(未回収の診療報酬や備品など)を現金化し、税金や従業員の給料、一般債権者への配当に充てます。

数ヶ月後に「債権者集会」が開かれ、管財人から債権者へ状況報告が行われます。

配当が完了するか、配当する資産がなければ、破産手続きは廃止(終了)となり、会社は法的に消滅して終了となります。

破産時に経営者が問われる法的責任とリスク

「会社が倒産したら、社長である私はどうなるのか?」

ここが経営者にとって最も不安な点でしょう。法的な責任の範囲を正しく理解しましょう。

金融機関からの借入と経営者保証(連帯保証)

中小企業の借入には、代表者が「連帯保証人」になっているケースが大半です。

会社が破産して借金を返せなくなった場合、連帯保証人である経営者個人が、会社の代わりに借金を返済する義務を負います。

会社の負債が個人の支払い能力を超えている場合、経営者個人も会社と一緒に「自己破産」をするのが一般的です。

経営者個人の破産と自由財産の拡張

「個人も破産したら、家も車も全て取られて、一文無しになるのでは?」と心配される方が多いですが、そうではありません。

破産法では、破産者の生活再建のために、手元に残せる財産(自由財産)が認められています。

具体的には、99万円以下の現金や、生活に必要な家財道具などは原則として処分されません。

また、弁護士を通じて裁判所に申し立てることで、自由財産の範囲を拡張(例えば、評価額の低い中古車や生命保険などを残す)できる場合もあります。

破産は「身ぐるみ剥がされる制度」ではなく、「再出発するための制度」なのです。

従業員の未払い給与と未払賃金立替払制度の活用

会社にお金がなく、従業員へ給料や退職金を払えないまま破産する場合、国のセーフティネットである「未払賃金立替払制度」が利用できます。

これは、独立行政法人労働者健康安全機構が、会社に代わって未払い賃金の一部(最大8割)を立て替えて支払う制度です。

この制度を利用するためには、破産手続の開始決定等の証明が必要です。従業員の生活を守るためにも、経営者は破産手続きを適切に行い、この制度の利用をサポートする責任があります。

出典:厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と実績」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shinsai_rousaihoshouseido/tatekae/index.html

利用者に対する安全配慮義務違反と損害賠償

もし、十分な引継ぎを行わずに突然サービスを停止し、その結果、利用者の容態が悪化したり死亡したりする事故が起きた場合、会社および経営者個人に対して損害賠償請求がなされる可能性があります。

特に経営者個人との関係では、破産による借金の免責(チャラにすること)とは別に、「悪意や重過失による不法行為」として、免責されない債務(非免責債権)となるリスクがあります。

だからこそ、破産申立前の利用者対応は極めて重要なのです。

不正請求が発覚した場合の返還義務と破産の関係

過去に診療報酬や介護報酬の不正請求を行っていた場合、行政から返還命令(40%の加算金含む)が出されます。

この返還金も破産債権として扱われますが、悪質性が高いと判断された場合、破産法上の「非免責債権」に該当し、破産しても支払い義務が残る可能性があります。

不正がある場合は、隠さずに必ず弁護士へ申告してください。

倒産を回避・被害を最小限に抑えるために今すぐ取るべき行動

まだ「倒産」と決まったわけではない、あるいは倒産するにしても被害を最小限にしたい。

そう考えるなら、今すぐに行動を起こす必要があります。

倒産前に必ず行うべき初動対応

資金状況と支払予定の可視化

まずは現状を正確に把握しましょう。

「いつ、誰に、いくら払う必要があるのか」「いつ、いくら入金があるのか」を表にまとめます。

通帳の残高、借入金の返済予定表、未払いの請求書をすべて並べ、資金ショートする「Xデー」がいつなのかを特定します。

コスト削減とキャッシュフローの見直し

即効性のあるコスト削減を行います。

役員報酬のカットや不要な経費の削減はもちろんですが、訪問看護で大きいのは「人材紹介会社への支払い」です。分割払いの交渉や、今後の採用計画の凍結を検討します。

また、請求漏れがないか再確認し、未収金があれば督促を行って現金を確保します。

重要書類・契約関係の整理

いざ弁護士に相談するとなった際、資料がないと判断ができません。

定款、商業登記簿謄本、決算書(直近3期分)、賃貸借契約書、リース契約書、従業員名簿、利用者名簿、債権者一覧表などを整理しておきます。

絶対にやってはいけないNG行動

焦るあまり、やってしまいがちな行動がありますが、これらは後の破産手続きで不利になったり、最悪の場合、犯罪(詐欺破産罪など)に問われたりする危険があります。

特定の債権者だけを優先して支払う行為

「お世話になった取引先だけには払いたい」「うるさい親族からの借金だけ返しておこう」

これは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、破産法で禁止されています。

これを行うと、破産管財人によって支払いが取り消されたり(否認権の行使)、最悪の場合、免責(借金の免除)が許可されない原因となります。

「もう払えない」と決めたら、すべての支払いをストップし、公平に扱うのが鉄則です。

無理な借入や資金移動による延命

「高金利のビジネスローンや闇金に手を出してでも、今月を乗り切ろう」というのは絶対にやめてください。

返済の見込みがないのに借入を行うことは、貸主に対する詐欺罪に当たる可能性があります。

また、会社の資産を個人の口座に移したり、隠したりする行為(資産隠し)は、厳しく処罰されます。

傷口を広げるだけの延命は、誰も幸せにしません。

専門家へ早期に相談する重要性

資金繰りに行き詰まった時、経営者は「恥ずかしい」「怖い」という思いから相談を遅らせがちです。

しかし、相談が遅れれば遅れるほど、選択肢は減り、利用者や従業員にかかる迷惑は大きくなります。

「給料が払えないかも」と思った段階で相談すれば、破産以外の選択肢(M&Aなど)が見つかるかもしれません。

手遅れになる前に、専門家へアクセスすることが、経営者としての最後の責任です。

訪問看護の破産手続きを弁護士に依頼するメリット

訪問看護の破産は、一般企業の破産よりもはるかに複雑で、高度な専門知識を要します。

自力での対応は不可能と言ってよいでしょう。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

債権者対応の窓口一本化と精神的負担の軽減

弁護士に依頼した時点で、すべての連絡窓口は弁護士になります。

債権者からの電話や督促が止まるため、経営者は恐怖から解放され、冷静な判断ができるようになります。

「電話が鳴るたびにビクビクする生活」から抜け出せるのは、最大のメリットと言えるでしょう。

複雑な行政手続きと利用者対応の法的サポート

破産申立ての書類作成だけでなく、行政への廃止届の提出や、利用者・家族への説明文書の作成、従業員説明会のシナリオ作りなど、弁護士は実務全般をサポートします。

特に、「いつ、誰に、何を伝えるか」という順序を間違えると大混乱になりますが、経験豊富な弁護士がいれば、適切なコントロールが可能です。

経営者個人の生活再建(自宅や資産を残せる可能性の検討)

弁護士は、会社の清算だけでなく、経営者個人の今後の人生も考えます。

破産しても手元に残せる自由財産の確保や、場合によっては「経営者保証ガイドライン」を利用して、破産せずに保証債務を整理する方法など、再出発に向けた最善のプランを提案します。

訪問看護の破産に関するよくあるご質問

最後に、訪問看護の倒産・破産に関して、経営者様からよくいただく質問にお答えします。

Q. 破産したら看護師としての資格・免許はどうなりますか?

A. 原則として、破産しても看護師や保健師の免許・資格を失うことはありません。

破産は経済的な失敗に対する処理であり、資格の欠格事由には当たらないからです(ただし、過去には一部の資格で制限がありましたが、法改正により現在はほとんどの資格で制限が撤廃されています)。

破産手続き終了後、また看護師として他の病院やステーションで勤務することは何ら問題ありません。

Q. 利用者さんへ破産を伝えるタイミングはいつですか?

A. 非常にデリケートな問題ですが、基本的には「弁護士への依頼後、方針が固まってから」かつ「事業停止の数週間〜1ヶ月前」が目安です。

早すぎるとスタッフや利用者が動揺して混乱が生じ、遅すぎると引継ぎ先が見つかりません。

弁護士と綿密に打ち合わせを行い、引継ぎ先の目処をつけてから告知するのがベストです。

Q. 資金が全くない(予納金が払えない)状態でも破産できますか?

A. 破産申立てには、裁判所に納める「予納金(最低でも20万円以上)」や弁護士費用が必要です。これらが全くない場合、手続きを進めるのは困難です。

しかし、第三者による援助を受けて行う方法や、適正な価格で会社の備品を売却して費用を捻出する方法など、何らかの手立てがある場合もあります。

「お金がないから相談できない」と諦めず、まずは無料相談を利用して状況を話してみてください。

Q. 運営指導(実地指導)の直前でも事業停止できますか?

A. 可能です。資金繰りが限界であれば、運営指導の予定が入っていても事業を停止し、破産手続きに入らざるを得ません。

ただし、運営指導を逃れるために偽装解散するようなケースは認められません。真にやむを得ない経済的理由があることを、弁護士を通じて行政へ説明する必要があります。

まとめ:訪問看護の破産は早期相談がカギ。一人で悩まず専門家へ

訪問看護ステーションの倒産は、経営者にとって非常につらい決断です。

地域医療への貢献という志を持って始めた事業をたたむことは、身を切られる思いでしょう。

しかし、資金繰りが限界に達したまま無理に運営を続けることは、結果として利用者、従業員、そしてあなた自身の家族をも不幸にしてしまいます。

「破産」は、決して恥ずべきことや人生の終わりではありません。法的に認められた、再出発のための権利です。

最も重要なのは、「資金が完全に尽きる前」に弁護士へ相談することです。

わずかでも資金が残っていれば、破産費用の捻出もスムーズになり、利用者や従業員への対応も手厚く行うことができます。

弁護士法人グレイスでは、医療・介護業界の法務に精通した弁護士が、経営者様の苦悩に寄り添い、最善の解決策をご提案します。

一人で抱え込まず、まずは無料相談で現状をお話しください。その一歩が、解決への糸口となります。