破産手続とは一体どういう手続き?

 「破産」という言葉はよく耳にしますが、一体どのような手続きなのかは正確に理解されていないことも多いものです。そこで、破産手続の概要について簡単にご説明します。

 破産手続とは、会社が債務超過にある場合に、その債務を現在存在する資産の範囲で清算し、会社を閉じるもので、必ず裁判所を通じて行う手続きです。

 破産手続は裁判所を通じる手続きですので、手続きの内容を細かく説明すれば数多くなりますが、ポイントを絞ると、その内容は、①会社の資産と負債の調査、②会社の財産の換価(金銭化)、③債権者に対する配当の3つに分けることができます。

①会社の資産と負債の調査とは

会社の資産の調査

 会社が破産手続の申立てを行い、裁判所により破産管財人が選任されると、破産管財人が会社の財産を管理します。破産管財人が管理するこの財産のことを破産財団といいます。破産手続は、破産財団を可能な限り大きくし、債権者に多くの配当を行うことが最も望ましい結果であり、破産管財人はそのために種々の業務を行います。例えば、破産手続上支払う必要のない支払いを止めて財産を確保したり、売掛金を回収したり、固定資産や車両等を売却して現金化したりする等の業務です。

 それらの業務を行うためには、破産会社がどのような資産を有しているのかを調査することが必要となります。

会社の負債の調査

 破産会社に対して権利を有する債権者に対し問い合わせを行い、債権者が有している権利(破産会社が負っている債務の内容)を調査します。これらの調査を行うにあたって、債権者には裁判所に対して債権の届出をしていただきます。破産管財人は届出債権が真に存在するのかを調査し、それが真に存在すると認めたものだけを配当の対象にします。

②会社の財産の換価(金銭化)

 破産管財人は会社が有する財産のうち換価可能なものを全て現金化し、配当原資を増加させていきます。中には、抵当権等の担保の付された不動産等が存在するケースもありますが、それらは抵当権者と協議のうえ、一定程度の金員を破産財団に入れていただくことを条件に抵当権実行によることなく任意売却できるよう試みます。

 また、破産会社によっては換価可能な車両や商品在庫、什器・備品等が存在しますので、それらも速やかに現金化します。会社が掛けていた保険を解約して返戻金を得たり、有価証券を売却して現金化すること等も行います。これらにより、破産財団が増加すればするほど、債権者に多くの配当を支払うことが可能になります。

③債権者に対する配当手続

 破産管財人による財産換価手続が終了した段階で、一定程度の破産財団が形成された場合には債権者に対する配当が行われます。

 破産手続においては、債権者は平等に扱われます。もっとも、そこにいう平等とは債権の性質に応じた平等です。

 債権の性質に応じて、財団債権、優先的破産債権、一般の破産債権に分類されます。財団債権とは、破産財団から最も優先して随時に弁済が受けられる債権をいい、破産債権者全体の利益のために生じる債権や、租税債権等が代表例です。財団債権、優先的破産債権、一般の破産債権の順番に配当手続がなされます。配当がなされるか、配当できるだけの破産財団にならなかった場合には、破産手続は廃止・終結します。

破産手続の大きな特徴とは?

破産会社は財産管理処分権を失う

 破産手続は、ひとたび会社が破産手続の申立てを裁判所に対して行うと、その後は裁判所が主導となって行う手続きです。そこでは、債権者の同意を得なければならない手続はありません。

 もっとも、だからといって、破産する会社が手続を主導できるというものでもございません。というのも、会社が破産手続を申し立て、裁判所がその手続を開始するとの決定(これを「開始決定」といいます。)を出すと、破産管財人という裁判所の補助機関となる役割を担う者(多くは申立代理人と異なる弁護士)が選任され、会社の財産管理処分権が破産会社から破産管財人に移るためです。

 従って、開始決定が出されてからは、破産会社はその有する一切の財産につき、自由に処分することができなくなります。

債権者は担保権の実行を除き、個別に権利行使ができない

 破産手続は全債権者のために公正・平等になされる手続ですので、担保権の実行をすることはいつでも可能ですが、特定の債権者だけが支払いを受けたり、強制執行を行うことは原則としてできません。

 他方、いくら債権者が抜け駆けをしなかったとしても、破産会社が開始決定前に重要な財産を処分したり、特定の債権者にだけ支払いをしたりすることもあり得ます。そのような行為が判明した場合、破産管財人は「否認権」といわれる権利を行使して、債務者によるそのような行為を取り消すことができます。結果として、特定の債権者が破産会社から受け取った財産は破産財団に返還されることとなります。

 よく「この債権者には迷惑をかけたくないから支払いをしたい」と希望される方がいらっしゃいますが、特定の債権者にだけ支払いをしてしまうと、破産管財人が否認権を行使することにより、その債権者は受け取った金員の返還を求められることになり、結果として却って当該債権者に迷惑をかけてしまうことにすらなります。何が否認権を行使される行為となるのかについても、事前に弁護士に相談されることが肝要です。

破産手続は保証人に影響を与えない

 例えば、会社が金融機関からの多額の借入金債務を主債務者として負担しており、その債務につき代表者が保証人になっていたとします。この場合、会社が破産手続を経たからといって、代表者が負っている保証債務まで消滅することはありません。

 そのため、会社が破産するときは、その保証人である代表者や役員も破産手続の申立てを会社と同時または事後に行うことがほとんどです。その場合には、破産管財人は法人である会社の債権債務と保証人である役員の債権債務が混同されていないかを調査することが多いです。

 会社の破産を選択する場合、その保証人がどのような法的手続をとるべきかも非常に重要な判断であり、弁護士等の専門家の知見が必要となります。

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