目次
破産債権とは
ここでは、財団債権と破産債権の違いについて解説します。
まずは、「破産債権」についてです。破産債権とは、破産者に対する破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって財団債権に当たらないものをいいます。金融機関からの借入、取引先の買掛金や外注費、会社の営業上の債権の多くは、破産債権に該当します。
債権者が債務者に対して持っている債権の多くは、債務者が破産を申し立て、破産手続開始決定が出た後は、破産債権に該当し、原則として破産手続外で債権を行使してその回収を図ることができなくなります。破産債権は、破産手続の中で、破産管財人が管理・換価した破産者の財産(破産財団)から、配当という手続によって債権額に比例してしか弁済を受けることができなくなります。
用語の説明
破産財団
破産財団とは、破産者の財産で、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもののことをいいます(破産法第2条第14項)。
例えば、会社(法人)の破産の場合、所有する預貯金・現金・不動産や自動車・在庫・売掛金など処分してお金に換えることができる様々な財産が含まれます。このような財産の集合体を「破産財団」といいます。
財団債権とは
一方、「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権です。財団債権は、破産財団の中から、別除権を除き、最も優先的に弁済を受けることができます。
財団債権と破産債権の違い
先ほどの解説からも明らかなように、財団債権と破産債権は、破産手続によらず随時弁済を受けることができる債権かどうかという点で異なります。
破産法では、破産債権者が持つ債権を「財団債権」と「破産債権」の2つに分けています。そのため、破産債権は、破産債権者が持つ債権のうち財団債権に当たらないものと定義されています。
財団債権か破産債権かは、債権発生の原因によって定まります。
財団債権の具体例
財団債権は、さらに本来的財団債権と呼ばれるものと政策的財団債権と呼ばれるものに分けられます。それぞれについて法律は以下のように定めています(破産法148条、149条)。
(1)本来的財団債権
・破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(法148条1項1号)
例:破産手続申立ての費用、破産手続開始決定の公告・送達の費用、債権者集会を開催するための費用など
・破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(法148条1項2号)
例:破産管財人の報酬、財産目録・貸借対照表の作成費用など
・破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権(法148条1項4号)
例:破産管財人が第三者と契約を結んだ際にその第三者が有する債権、破産管財人のした行為が不法行為にあたる場合の損害賠償請求権など
・事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権(法148条1項5号)
例:破産財団に含まれる建物の修繕が必要と判断して義務なく修理を行った人が代わりに出した修繕費など
・委任の終了又は代理権の消滅の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権(法148条1項6号)
例:委任契約終了後に急迫の事情があるため受任者が事務処理を行った場合の費用
・破産管財人が双方未履行の双務契約の債務の履行をする場合において相手方が有する請求権(法148条1項7号)
例:破産者が第三者と売買契約を結んでいたが品物も代金も渡していなかったという場合に、破産管財人がこの契約を履行した方がいいと判断した場合に第三者が持つ請求権など
・破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れがあった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権(法148条1項8号)
例:破産者が破産したため従業員との間の雇用契約を解除したとして、その契約期間が満了するまでの間に生じた給料債権など
(2)政策的財団債権
・破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権であって、破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から一年を経過していないもの(法148条1項3号)
・破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料(法149条1項)
・破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当について退職前3か月間の給料に相当する額(法149条2項)。
財団債権内の優先順位
全ての財団債権は全ての破産債権に優先しますが、その財団債権内にも優劣関係があります。財団債権の優劣関係は、条文及び解釈上、以下のように理解されています。なお同順位の債権間では債権額での按分配当となります。
- 管財人報酬(立替事務費を含む)
- 債権者申立て又は第三者予納の場合の予納金補填分
- 破産法148条1項1号・2号の債権
・破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(1号)
・破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(2号) - その他の財団債権
破産債権内の優先順位
破産債権には4つの種類があり、優先順位が決められています。優先順に並べると以下のようになります。
①優先的破産債権
優先的破産債権は、他の破産債権よりも優先的に配当を受けられる破産債権です。財団債権に当たらない租税公課や財団債権に当たらない従業員の給料債権などがこれに当たります。
②一般の破産債権
一般の破産債権は、他の破産債権に該当しない破産債権のことです。破産債権のほとんどがこの類型に含まれます。
売掛金や金融機関の借入金債権などがこれに当たります。
③劣後的破産債権
劣後的破産債権とは、優先的破産債権と一般の破産債権を持つ破産債権者に対して配当された後、破産財団に残余がある場合に配当を受けることができる破産債権です。
破産手続開始決定後の利息債権、遅延損害金債権、延滞税や加算税がこれに当たります。
④約定劣後的破産債権
約定劣後的破産債権は、配当の優先順位が最も下位の破産債権です。破産手続開始前に、その配当の順位が劣後的破産債権よりも劣る旨を破産債権者と破産者との間で合意された債権のことを言いますが、現実的にはそのような合意がされるケースはあまりないと思われます。
財団債権の弁済方法
財団債権は、随時弁済、つまり、破産財団の中からいつでも支払いを受けることができます。配当を通じた比例弁済ではなく、基本的には全額の弁済を受けることができます。
もっとも、財団債権の中にも優劣関係があり、同順位の財団債権が複数ある場合は、債権額での按分弁済となります。
破産財団が財団債権全ての弁済を行うのに足りない場合、劣後する財団債権の一部または全部について弁済がなされないこともあります。会社破産の場合、破産手続終了によって債務者(破産者)である会社は消滅し、会社が負っている残存債務も全て消滅します。それは財団債権であっても例外ではないため、財産債権であっても必ず弁済を得られるわけではありません。
なお、破産管財人が財団債権を承認するには、裁判所の許可が必要となります。ただし、100万円以下の財団債権については裁判所の許可を要せずに破産管財人自身が財団債権を承認して弁済を行うことができます。
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まとめ
ここでは、財団債権と破産債権の違いについて解説しました。
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