会社破産の手続の流れ 

 会社破産を何度も経験される方は少ないと思います。 

 そこで、本記事では、具体的にどういった流れで破産の申立てから会社破産の手続が進んでいくかの概略を解説いたします。 

 破産準備の段取りは個別の事案によって異なりますが、オーソドックスな流れは次のようなものです。 

ステップ01.弁護士への相談と依頼
ステップ02.債権者に破産予定であることを通知
ステップ03.従業員を解雇する 
ステップ04.必要書類の準備と破産申立書の作成 
ステップ05.裁判所に対する破産の申立て 
ステップ06.裁判所による破産手続開始決定・破産管財人の選任・嘱託登記 
ステップ07.破産管財人による財産調査と換価業務
ステップ08.債権者集会での報告 
ステップ09.債権者への配当 
ステップ10.破産手続の終了 
ステップ11.裁判所の嘱託登記によって会社が消滅(債務も消滅)

 この流れのうち、ステップ01から04までが破産の準備期間で、ステップ05からステップ11が裁判所の関与する法律上の破産手続に入ります。後者については、どの事件でも同じ流れを辿りますが前者の準備期間の流れは事案によって異なります。事案の内容によっては、ステップ02の債権者への通知を、ステップ05の破産申立てと同時に行うこともあります。 

 以下では、各ステップの内容を個別に説明します。 

01.弁護士への相談と依頼 

 破産を考えた際、まず初めに行うべきは弁護士への相談と依頼かと思います。現実問題として、弁護士を就けずに会社破産を行うケースは極めて稀です。 

 相談の時期ですが、できる限り早い方が良いです。破産を決意しておらずとも、債務返済の見通しが怪しくなった際は、その時点で一度弁護士に相談すべきでしょう。なぜなら、会社の場合、破産を行うにも弁護士費用や裁判所への予納金(官報広告費、管財人報酬)で数十万円から数百万円を要することとなり、現金を完全に失ってからでは破産することすらできなくなるからです。ちなみに、会社破産では法テラスは利用できません。法テラスは個人の救済を目的とした制度であり、会社は利用対象から外れるためです。 

 弁護士に相談する際は、弁護士から質問される内容に答えるだけで基本的には構いません。一通りの聴き取りが行われた後は、弁護士から今後の方向性についてのアドバイスがされます。破産やむなしと判断される際でも、必要な手続や見込まれる期間、今後の具体的な段取りについて説明がされるはずです。 

02.債権者に破産予定であることを通知 

 会社破産について依頼を受けた弁護士は、債権者に対し、債務の返済不能を理由として破産申立て予定である旨を通知します。これを、法律家の間では「受任通知」と呼びます。 

 受任通知には、貸金等に関する債権者からの直接的な取立てを止める効果があります。貸金業者は、弁護士から債務整理に関する受任通知が届いた際は、債務者に対して直接電話したり訪問したりして督促を行うことが法律上禁止されているからです(貸金業法第21条1項9号)。 

03.従業員を解雇する 

 会社は、破産を行うと法人格を失い消滅します。また、破産手続は残存財産(破産財団)を債権者に対して平等に分配する手続のため、破産財団を減少させる行為は速やかに停止させる必要があります。こうした理由から、破産を決意した場合、従業員については破産申立て前に解雇されます。破産手続開始後に破産管財人の手によって解雇されるケースもあり得ますが、通常は、破産申立て前に従業員を解雇するのが通常です。 

 従業員の解雇に当たっては、まず、従業員説明会を行います。その他、従業員に対しては、解雇通知書を作成したり、社会保険や住民税といった行政上の手続や、賃金の未払金が発生する見込みの場合には未払賃金立替払制度の説明など、様々な事項の説明を行うことが求められます。 

 内容が詳細に及ぶため、会社破産における従業員への影響については、こちらの記事もご覧ください。 

04.必要書類の準備と破産申立書の作成 

 会社破産の申立てを行うには、法定の事項を記載した破産申立書を作成し、必要となる添付資料と合わせて裁判所に提出する必要があります。 

 破産申立書は弁護士が作成しますが、必要な添付資料の多くは会社様自体にご用意いただくこととなります。 

 必要となる添付資料として一般的なものとして以下のようなものが挙げられます。  

・預金通帳(過去2年分を記帳したもの)
・直近2期分の決算書(付属明細書を含む)
・法人名義の不動産を所有している場合は不動産登記簿謄本、固定資産税評価証明書
・法人名義で事務所賃借している場合は賃貸借契約書
・有価証券、ゴルフ会員権がある場合は、その証券
・訴訟がある場合は、訴訟関係資料
・法人名義で生命保険に加入している場合は証書と解約返戻金計算書
・法人名義で自動車を所有している場合は、車検証、価格査定書
・帳簿類(総勘定元帳、売掛台帳、現金出納帳等)
・雇用関係の資料(雇用契約書、賃金規定、賃金台帳等)
・債権関係資料(金銭消費貸借契約書等)
・法人の商業登記簿謄本原本
・取締役会がある会社については自己破産の申立を決定した取締役会議事録

05.裁判所に対する破産の申立て 

 ステップ4までの準備を終えたら裁判所に対して破産申立書と添付資料を提出することで破産の申立てを行います。破産申立書には印紙を貼付する必要があります。会社破産の必用印紙額は1000円です(ちなみに、個人破産の場合は1500円です。)。 

 また、破産申立て時に裁判所から手続に要する郵券(切手)の予納を求められます。必要となる郵券は裁判所ごとに異なるため、破産申立て前にあらかじめ管轄裁判所に問い合わせを行い、必要となる郵券の額と組み合わせを確認します。 

 破産申立てを行うと、裁判所が破産申立書や添付資料に不備がないかを確認し、必要があれば破産申立人代理人に対して補正や釈明、資料の追完が求められます。こうした裁判所からの指摘を受けた破産申立人代理人は、指摘事項への対応を行うこととなります。 

 その後、裁判所は、破産手続の開始原因である債務者の「支払い不能」の状況の有無を判断し、支払い不能と認める際は、破産申立人代理人に対して官報公告費1万4786円と管財人報酬費用の予納が求められます。管財人報酬費用の予納額は事案ごとに裁判所が決定しますが、会社破産の場合20万円を下回ることはほとんどないかと思います。 

06.裁判所による破産手続開始決定・破産管財人の選任・嘱託登記 

 官報公告費と管財人報酬費用の予納が済んだら、裁判所は破産管財人候補者を決めた後、破産手続開始決定と破産管財人の選任決定を行います。事案によって、これらの決定前に審尋期日という期日を設け、破産申立人・破産申立人代理人・管財人候補者を集めて、開始決定後の流れについて協議を行うこともあります。 

 なお、破産手続開始決定がされると、裁判所書記官は、職権で遅滞なく破産手続開始の登記を当該破産者の本店または主たる事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託することとなります(破産法257条1項)。 

07.破産管財人による財産調査と換価業務 

 破産管財人は、破産者となった会社の財産(「破産財団」と呼びます。)一切について管理処分権が与えられます。会社が結んでいた契約を解約したり、売却したり、廃棄することが可能となります。破産管財人が処分できる財産の対象は、不動産・動産・債権その他特許権などの無体財産権まで一切の財産に及びます。 

 破産管財人は、これらの財産を現金に変える作業を行います。これを「換価業務」と呼びます。換価業務は、破産管財人の主たる業務です。破産管財人は、この換価業務を通じ、「破産財団」を増殖させます。破産財団は、債権者に対する配当の原資となります。つまり、破産財団を増殖させればさせるほど、債権者たちは多くの配当を受け取ることができるようになります。こうした仕組みから、破産管財人には、総債権者の代理人的性格があると言われています。 

08.債権者集会での報告 

 破産手続が開始されると定期的に債権者集会期日が定められます。債権者集会とは、破産管財人が破産者の財産状況や手続の進捗状況を裁判所と債権者に対して報告を行う期日です。換価業務の状況もこの報告の対象となります。 

 債権者であれば債権者集会に出席できますが、出席は自由であり、義務ではありません。関心がなければ出席しないことも可能です。現実には、債権者が誰も出席しないことの方が多いです。 

09.債権者への配当 

 破産管財人による財産調査や換価業務の結果、債権者に対して配当に回せるだけの破産財団が形成された場合には、配当が実施されます。配当は、各債権者の頭割ではなく、債権額割となります。 

 なお、配当は債権者全員に公平になされますが、公租公課の一部や未払給料債権、退職金債権の一部は「財団債権」として破産財団の中から優先的に弁済されます。また、破産債権の中でも「優先的破産債権」と呼ばれ、他の破産債権に優先して配当がされるものもあります。一般の破産債権は、こうした財団債権・優先的破産債権への弁済が行われ、なお残余がある場合にのみ配当が行われます。  

10.破産手続の終了 

債権者への配当を終えると裁判所が終結決定がされて、破産手続が終了します。 

破産管財人による財産調査や換価業務の結果、配当を行えるだけの破産財団を形成できなかった場合は、終結決定ではなく、廃止決定(異時廃止)が行われて、破産手続が終了します。 

11.裁判所の嘱託登記によって会社が消滅(債務も消滅) 

破産手続が終了すると、裁判所書記官が、職権で、遅滞なく、破産手続終結の登記を当該破産者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託することとなります(破産法257条7項)。この登記によって、会社の会社格が消滅し、商業登記簿が閉鎖されます。これにより、会社が消滅し、同時に会社が負っていた債務も消滅します。 

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まとめ 

 ここでは、会社破産の手続の流れを解説しました。 

会社破産の手続は複雑で、弁護士費用や裁判所への予納金の関係からある程度の余力を残した状態でなければ行うことができません。 

ですので、是非早めに当事務所にご相談いただければ幸いです。早めにご相談いただければ、そもそも破産という結論を避けることができるケースも少なくありません。 

 当事務所は、お客様のため全力でお力添えすることを約束しております。債務整理は気の重い話かもしれませんが、放っておけば状況は悪化する一方です。軽い気持ちで構いませんので、是非お早目に当事務所にご連絡ください。 

 破産申立書は弁護士が作成しますが、必要な添付資料の多くは会社様自体にご用意いただくこととなります。 

 必要となる添付資料として一般的なものとして以下のようなものが挙げられます。