2024/02/22 法人破産

破産した法人の財産はどうなるのか  

 資金繰りが苦しくなりもはや事業継続は難しい。。。そのような苦境に陥った際、経営者の方の中には会社(法人)の財産を隠匿して残したいと考える方もいらっしゃるかと思います。 

 この記事は、そうした破産の可能性が現実化する中で財産隠匿を行なった場合、法律上どのような結果がもたらされるのかについて解説するものです。 

 このテーマを理解するためには、そもそも破産手続とは何を目的とするものかを知る必要があります。結論から言えば、破産とは破産者に残された財産を換価(有価物を金銭に変えること)し、破産法が規定するルール(債権者間の優先順位など)に基づいて各債権者に公平に分配する手続です。 

 法人が破産する場合、裁判所から破産管財人が選任され、この破産管財人が破産法人の財産を管理し、処分を行います。売却できる財産は売却してお金に換え(換価)、まず優先権のある債権への弁済に充てられ、残った財産が一般の債権者に平等に配当されます。 

 法人破産の場合、個人破産と異なり、破産手続が終結すると法人自体が消滅することになります。そのため、法人様では、法人の全財産が破産管財人によって処分されるのが原則です。個人の破産のケースのように、破産者の生活のためなどの理由から一定の自由財産の保有が認められたり、破産手続の開始後に特定の財産を破産手続による処分から外して(破産財団からの放棄)破産者の自由財産としたりするということはありません。 

 このように、法人破産の場合、破産法人の財産は破産管財人を通じて全て換価された上で債権者に分配されることが原則となります。例外としては、破産法人に積極財産がほとんど存在せず債権者に対する配当を行う手続費用すら賄えないような場合が挙げられます。この場合でも、破産法人に残された財産は破産管財人の報酬とされるのが通常であり、法人財産が一切残らないという点は、配当のあるなしによっても変わりません(法人自体や法人代表者の個人資産として残存させることはできません)。 

  

財産を隠匿するとどうなるのか  

 では、破産を前に法人財産を隠匿した場合、法的にはどのような取り扱いがされるのでしょうか。 

 例えば、法人名義の預金を代表者個人や親族名義の預金口座に移し変えたり、不動産の名義を変更したりした場合、どうなるでしょうか。また、相場価格よりも明らかに低い金額で法人の財産を売却した場合はどうでしょうか。 

 このような行為をすると、破産手続に入った後に、破産管財人に「否認」され、財産が取り戻されることとなります。取り戻された財産は、原則通り破産管財人によって換価された上、債権者への配当原資にされます。 

 また、破産手続に際して財産を隠匿する行為は犯罪として刑事責任をも問われます。 

 破産手続開始の前後を問わず(下記の類型3-(5)は破産手続開始決定等がなされた後のみ)、債権者を害する目的で以下の行為をした場合、詐欺破産罪という犯罪が成立して刑事罰を受ける可能性があるのです。 

 罰則は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくはこの両方ですので、決して軽い罪ではありません(破産法265条)。 

詐欺破産罪とは  

 詐欺破産罪の対象となる行為は、具体的には以下のとおりです。 

 なお、この犯罪の成立には、「債権者を害する目的」が必要ですので、この目的がなければ犯罪は成立しません。 

(1) 「債務者の財産を隠匿または損壊する行為」(同条1項1号) 

 「隠匿」とは、故意に法人の財産を隠すこと、「損壊」とは故意に壊すことです。 

 過失(不注意)により紛失してしまった場合や、過失によって壊してしまったりしたという場合は含まれません。 

(2) 「債務者の財産譲渡または債務負担を仮装する行為」(同条1項2号) 

 第三者に財産を売却したかのような契約書を作成するなどして法人の財産がすでに譲渡されているかのように装ったり、実際には貸してもいないのに金銭を債務者に貸し付けたかのような契約書を作成したりするなどして、法人が債務を負担しているように見せかける行為です。 

(3) 「債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為」(同条1項3号) 

 損壊以外の方法で法人の財産の現状を改変することにより、財産の価格を減損する行為です。 

 法人が所有する更地上に建物を建て土地価格を下落させる行為などがこれに当たります。 

 ただし、ここでも債権者を害する目的が必要ですので、このような行為がすべて詐欺破産罪に当たるわけではありません。 

(4) 「債務者の財産を債権者の不利益に処分しまたは債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為」(同条1項4号) 

 これまでにあげた隠匿、損壊、仮装行為や財産の現状を変更する行為ではなくても、債権者に不利益を与えるような効果を生じるものであれば、詐欺破産罪の対象となり得るということです。 

 典型的なものとしては、財産の無償贈与、著しい廉価売却、ヤミ金などから著しく高利で借入れ行為などです。 

 なお、この不利益処分等の行為については、法人側の行為者だけでなく、当該行為の相手方も、債権者に不利益を与えるために行っているという事情を知っている場合には、同様に刑罰を科されることになります。 

(5) 「債務者について破産手続開始の決定がされまたは保全管理命令が発せられたことを認識しながら、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得しまたは第三者に取得させる行為」(同条2項) 

 これは破産者ではない別の人間の行為を規制し違反者に対して刑罰を与えるものです。裁判所により破産手続開始の決定等がなされた後、この決定等を知りながら、正当な理由なく法人財産を取得し、あるいは第三者に取得させた場合、破産者だけでなくその者にも詐欺破産罪が成立します。 

結論  

 以上のように、破産手続の直前に財産隠匿行為を行なった場合、破産管財人によって当該行為が取り消された上取り戻されてしまうほか、刑事訴追され刑罰の適用を受ける可能性があります。 

 こうしたペナルティの重さに鑑みても、そのような行為は行うべきではないでしょう。 

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