資金繰りの悪化や後継者不在等により会社を破産させたいとのご相談を受けることが増えております。しかし、破産手続を申請しようと考えてもそれが困難であると判断せざるを得ない場合があります。どのような場合に破産手続の申請が困難あるいは不可能になるのか、弁護士が解説いたします。

どのような場合に破産手続の申請が可能になるのか

 破産を希望したとしても、破産手続開始原因が認められなければ、その手続きを申請することができません。

 そして、法律は「債務者が支払不能にあるとき」を破産手続開始原因として認めています(破産法15条1項)。また、「債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。」(同条2項)と定められています。

「支払不能」の場合

 「支払不能」とは、財産や信用、労務欠乏のために弁済する能力がなく債務者が弁済期の到来した債務を一般的、かつ、継続的に弁済することができないと判断される客観的状態をいいます。「一般的かつ継続的に弁済できない状況」とは、全ての債務を考えた場合にそれを弁済していく能力が欠ける状態であり、かつ、将来的に全てを弁済していく見込みを欠く状態を意味します。

 つまり、特定の債権者にだけ弁済することができない場合や、一時的に支払いができないに過ぎない場合は「支払不能」といえず、破産手続を開始することができません。

「支払停止」の場合

 また、「支払停止」とは、財産や信用、労務欠乏のために弁済する能力がなく債務者が弁済期の到来した債務を一般的、かつ、継続的に弁済することができない旨を外部に表示する債務者の行為をいいます。支払不能が客観的状態を指すのに対し、支払停止は債務者の行為を指す点に違いがあります。

 客観的状態があれば直ちに破産手続開始原因が認められますが、そのような客観的状態にあることを外部に表示することは「支払停止」と呼ばれており、「支払不能」と推定されるため、結果として破産手続開始原因が認められることになります。

 支払停止の代表的な例は、弁護士による破産の受任通知や、手形の不渡り、夜逃げ等が挙げられます。

「債務超過」の場合

 更に、会社に特有の破産手続開始原因として、「債務超過」も認められています。債務の合計が資産の合計を超過している状態をいいますので、貸借対照表を見れば債務超過の有無は容易に確認ができます。

 これらの破産原因に該当する事由があることが、破産手続を申請するうえでの前提となります。

破産手続には一定の現金が必要?!

(1)破産手続を申請するにあたっては、収入印紙や官報公告費用等を裁判所を通じて納めなければなりませんが、これらの費用はそれほど高額ではございません。ところが、破産手続を申請するにあたって必要なものに、「裁判所予納金」と「弁護士費用」があり、これらは一定の現金を必要とします。

 しかしながら、経営者の方の中には、資金繰りが完全にショートするまで何とか存続を図ろうとされる方も多く、いざ法的手続で清算をしようとすると、破算手続を申請するにあたって要する現金がほとんど残っていないことがあります。そのため、現金が完全にショートする前に破産手続についての相談を弁護士にされることが重要です。

(2)裁判所予納金は、破産手続開始決定時において選任された破産管財人に引き継ぐ手元資金のことをいいます。この予納金は破産財団に引き継がれることとなり、その一部は財団債権(最も優先的に弁済される債権)である破産管財人の報酬等に充てられます。

 予納金の額は裁判所により決定されますが、東京地方裁判所がおおよその基準につき公表しており、その額は次のとおりです。(※なお、事案の内容や裁判所の管轄によっては異なる場合がありますので、一応の目安とお考えください。)

負債総額予納金の額
5000万円未満70万円
5000万円~1億円未満100万円
1億円~5億円未満200万円
5億円~10億円未満300万円
10億円~50億円未満400万円
50億円~100億円未満500万円
100億円以上700万円~

 以上のとおり、裁判所予納金は高額に上ることから、これを予納することができる現金を保持していることが破産手続の申請にあたって求められます。裏を返せば、裁判所予納金が納付されない限り、破産の申立てをしたとしても、裁判所は破産手続開始の決定をせず、申立てを却下します。

破産手続が認められない「不当な目的」とは?

 破産法は裁判所予納金が支払われない場合だけでなく、「不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき」にも、裁判所は破産手続開始の決定をせず、申立てを却下します。

 不当な目的や不誠実な申立てとは、例えば、

  • 返す意思も能力もないのに申立ての直前に多額の借入を行い破産の申立てを行うケース
  • 財産を隠匿したまま破産の申立てを行うケース

などです。このような悪用なケースにおいては、ただ単に破産手続を行うことができないだけでなく、詐欺破産罪として刑事処罰を受ける可能性もあります。

他の法的手続がなされている場合にも破産手続は可能なのか?

 会社更生手続や民事再生手続など他の倒産処理手続が開始され、または開始されようとしているときは破産手続開始の申立ては却下され、あるいは破産手続が裁判所によって中止されます。

 資金繰りに窮していることから経済的再生を図るため、あるいは後継者がいないために破産手続の申立てをすることは1つの有用な手段です。上記のように破産手続を申し立てるには一定の条件が必要ですが、弁護士はご相談いただいた時点において形式的に破産の要件を充たしていなくとも、その要件を充たすような助言をすることにより破産手続の申立てが可能になることもあります。

 もし破産手続の申立てにつき少しでもご検討されたい場合には是非当事務所にご相談ください。