目次
はじめに
会社を倒産させるべきかお悩みの方の多くは、会社の破産によって会社内外の関係者にどのような不利益・影響を与えるか懸念している方となります。そこについて悩むがゆえに、会社倒産をするべきか躊躇してしまうのです。
そこでこの記事では、会社破産によって取引先・債権者にどのような影響を及ぼすこととなるのか、対応策も含めてご説明いたします。
会社の破産で取引先に与える影響とは
会社を倒産させた場合、取引先はあなたの会社・企業から回収するはずであった債権・売掛金の回収ができなくなり、貸倒れとなります。特に中小企業であれば、取引先の規模も小さいことが多いため、連鎖的な倒産を招く可能性もあります。
会社について破産手続が開始されますと、裁判所が選任した破産管財人と呼ばれる弁護士が、倒産した会社の財産状況の管理・処分(つまり現金化)を進めることとなります。もし会社に余剰財産が残っていた場合には、それらは現金化された上で、税金・労働者の賃金などの優先的な債権への支払に充てられたのち、一般の取引先・債権者の債権の支払に充てられることとなります。
但し、一般的な破産事件ですと、そもそも税金を支払う余力もないことが大半ですから、一般の取引先・債権者への配当があったとしても、債権額の数%程度になってしまうことが多いです。そうしますと、やはりいくら配当がなされる見込みであったとしても、破産された場合の取引先は多額の貸倒れを抱えることとなるのです。
会社破産後の取引先への対応方法と注意点
このように、会社破産によって取引先に与える影響は大きいものとなりますが、それでも会社に余力がない以上は、破産の選択を取らざるを得なくなります。
そういった場合の会社破産後の取引先への対応方法と注意点は、以下のとおりとなります。くれぐれも、取引先との従前の関係性に甘えた対応をとってはいけません。
特定の債権者だけに支払いをする行為は禁止
まず、破産手続は、広く債権者全体の平等というものを重視する手続です。このため、特定の債権者だけに支払いをする行為は禁止されます。このように特定の債権者との関係性に甘えて、一部だけを優先する行為をとると、破産手続中に、破産管財人から指摘を受けます。そのような場合には、破産管財人がそのような支払い(法律上、偏頗(へんぱ)弁済といいます。偏った弁済という意味です。)を否認し、取引先に対してその返還を求めることとなります。
こうなってしまっては、更に取引先に迷惑をかける事態になりますから、一部の債権者だけに支払いをすることは慎む必要があります。
新たな借入れをする行為は禁止
また、新たな借入れをする行為も禁止されます。会社破産の手続中は、会社は倒産処理に必要な限度で存続するのみで、新たな事業活動をすることはありません。このため、会社が新たな借入れをすることは想定されないのです。
会社破産手続中に、会社破産中であることを秘して借入れをしてしまうと、詐欺罪が成立する可能性すらあります。やはり、仲の良い取引先であったとしても、破産の準備に着手したのちは、甘えた行動を取ってはいけません。
取引先への謝罪等をする場合には、弁護士の指示を仰ぐ
会社を倒産させる場合には、取引先に対して謝罪の連絡を入れたいという経営者の方も多いです。このような場合には、不用意な発言のないように、弁護士の指示を仰ぎましょう。
通常は、弁護士が送付する書面に謝罪の文言が入っていることが多いですから、それで謝罪を済ませることが多いです。社長による謝罪にも重要な意義はありますが、そこで取引先から何か言われた場合に臨機応変な対応をとることは難しいです。対応方法については、必ず弁護士に事前にご相談ください。
経営者の出番となるのは、むしろ取引先に対して他の業者を繋ぐこと、今後の取引相手を紹介することを要する場面でしょう。業界人でなければ分からない事情を弁護士にも共有いただき、できるだけ取引先への影響を抑えてあげるための行動をとることの方が重要といえます。
債権者集会での取引先への対応について
破産手続が進むと、裁判所に、破産管財人・破産した会社の経営者・破産した会社の代理人弁護士を呼んだ上で、出席を希望する債権者の前で会社の財産状況等を報告する債権者集会が開かれることとなります。
一般の銀行や消費者金融であれば破産になれているので、債権者集会に来ることは稀です。しかしながら、中小企業の取引先や、個人経営の債権者などは、債権者集会に来ることがあります。
破産手続においては、しばしば「情報の配当」と呼ばれる概念が重視されます。金銭的な配当がなされない代わりに、破産に至った経緯や会社の財務状況をできるだけ真摯に回答・説明し、情報だけでも配当するという考え方です。実際、多くの債権者が、「何が起こったのか。」という点に重きを置いて債権者集会に臨みます。
やはり債権者集会では、起立して一礼するなどの謝罪を代理人弁護士と共に行い、債権者から質問が出た場合には、できる限り真摯に回答を尽くすことが必要といえるでしょう。どのような対応を取るべきかお悩みの方は、破産手続についてご依頼された弁護士にご相談いただくことが有用であろうと考えられます。
まとめ
以上のとおり、会社破産での取引先への影響と対応についてご説明しました。上記のとおり、会社を破産させるという決断は、会社内外の多くの方に多大な影響を与えることです。しかしながら、会社に経営継続の余力がない以上は、その決断をせざるを得ない場面にいずれ出くわすでしょう。このような場合に、適切・丁寧な対応ととれるよう、また、それまでの関係性に甘えてしまわないよう、注意が必要です。
当事務所では、会社を破産させるか悩んでいるという段階の方からのご相談もお待ちしております。会社のご状況を踏まえ、破産という選択を取った場合の見通し等をご説明しますので、結果として破産しないという選択を取られても全く問題ございません。
あなたからのご相談を、お待ちしております。