法人向けのつなぎ融資とは

 法人向けの「つなぎ融資」をご存じでしょうか?

 つなぎ融資とは、一時的な資金需要に応える融資で、何かしら突発的な事態に遭遇した際に、次に売上が生じるタイミングまでの「つなぎ」として受けるものを指します。銀行から通常の融資・事業用ローンの貸付を受けるよりも緩やかな審査で、早期に融資を受けることができます。

 これによって、災害や火事等が起きた際などに緊急で必要な運転資金を借り受け、経営を繋ぐこととなります。緊急的な資金需要が生じてしまうと黒字倒産まで見えてきますから、つなぎ融資は最後の首の皮一枚をつなぎ止めてくれるものとも言えるかもしれません。

 ちなみに、つなぎ融資はこのような趣旨のものですので、融資期間が短い点にも特徴があります。つなぎ融資は、あくまでも、次に売上が生じるタイミングまでの融資に過ぎないといえます。

つなぎ融資を検討するタイミング

 それでは、どのような時につなぎ融資を検討することとなるのか、具体的に見てみましょう。

事業の資金が不足している時

 まず、事業の資金が不足しているタイミングにつなぎ融資を用いることが検討されるでしょう。一時的な収支状況によって事業資金が不足している時期に、仕入れ等のために必要な資金の融資を受けることで売上を上げることができます。

 また、手元の現預金(キャッシュ)が一時的に不足しているタイミングにも、つなぎ融資を利用することが考えられます。

 いずれにしても、つなぎ融資によって得られた資金を元手に、素早いタイミングで売上を上げ、つなぎ融資を返済できる見込みが立つという場合につなぎ融資を利用することが検討されるといえます。

補助金や助成金の入金を待つ時

 次に、補助金や助成金の入金を待つタイミングに、つなぎ融資を用いることを検討することがあり得ます。

 補助金や助成金は、所定の要件さえ満たせば、ある程度確実に資金獲得をできる手段です。このため、これらの申請中・許可待ちの状態の時であれば、つなぎ融資を利用しても、のちに入金される補助金や助成金を用いてつなぎ融資の返済をすることが充分可能となります。

 このように、補助金や助成金の入金を待っている間、先につなぎ融資を利用することで、事実上早い時期に資金獲得することを狙うという利用方法もあります。

不測の事態が発生した時

 最後に、不測の事態が発生した時につなぎ融資を用いるということがあります。

 不測の事態としては、様々な事態が想定されます。例えば、取引先が倒産して売掛金が支払われる見込みがなくなってしまったり、火事・地震等の災害に対する救急対応を要したりするなど、会社の資金が急激に減少する事態が挙げられます。

 このような場合にも、つなぎ融資を用いて早急に資金を得る必要が生じます。つなぎ融資による早期の資金獲得により、黒字倒産の危機を回避することができるのです。

つなぎ融資を利用するメリット

 以上のとおり、つなぎ融資を用いる代表的な例についてご説明しました。次に、つなぎ融資を利用するメリットについてご紹介します。

経営悪化の立て直しができる

 まず、経営悪化の立て直しができます。

 一時的なものであれ、経営悪化は、資金繰りを悪化させて手元の資金を喪失させていくものです。そうすると、事業の縮小・事業利益の低下に繋がることとなるでしょう。こうなってしまうと、更に資金繰りが悪化していきます。

 そのような事態を放置して何らの対応も取らないのでは、会社は悪い循環から脱却できません。その先に待つのは、事業停止・廃業といった事態でしょう。

 このような場合には、何かしら経営上の判断による改善をしなければならなくなります。そこでつなぎ融資は、短期的な資金回復を起こすものとして利用できるため、こういった悪い循環から抜け出すための一つの手段となり得るのです。

 つなぎ融資は経営改善の手段として簡便かつ分かりやすいものといえますから、積極的に活用する経営者の方は多いようです。

金融機関との関係が改善される

 次に、金融機関との関係を改善も期待できます。

 上記のように資金繰りが悪化してしまった結果は、決算書などの会社の各計算書類に如実に表れてきます。このような計算書類は、通常の融資を受ける際などにも金融機関の目に触れるものですから、やはりこういった状態を放置してしまうと、金融機関との関係も悪化し、貸し渋りにあう事態まで想定されてきます。

 つなぎ融資を利用すると、早急に資金繰りを回復させることができますから、計算書類上の会社の状態をより良いものとすることができ、金融機関との関係改善を図ることもできます。こうすることで、金融機関からも積極的な融資を受けることができるようになれば、資金繰りがより一層回復し、事業の拡大・事業利益の増大という好循環に入っていくこともできるでしょう。

 つなぎ融資には、このような会社を取り巻く環境を丸ごと好循環に運ぶメリットも期待できるのです。

申込みのハードルが低い

 また、つなぎ融資は申込みのハードルが低いこともメリットの一つといえます。

 つなぎ融資は緊急の資金需要に応えるものであるとともに、次の売上が見込まれるために貸し付けてくれるものでもあります。銀行からすれば売上が上がれば返金されることが見込まれており、かつ、返済時期も比較的短期に設定されるため、通常のローンよりも安心して貸し付けてくれる性質のものとなります。

 このため、つなぎ融資には、保証人や担保を立てなくとも借り入れることができるものがあります。このように、申込みのハードルが低い点もメリットといえます。経営者からすると、自身の与信枠をある程度考慮せずに借り入れることができる便利な手段であるとも言えるでしょう。

つなぎ融資を利用する注意点(デメリット)とは

 これらに対して、つなぎ融資を利用する注意点(デメリット)は、主に以下のような点といえます。

融資期間が短い

 まず、融資期間が短く、早期の返済を求められる点に注意が必要です。

 つなぎ融資は、あくまでも「一時的な資金需要」を満たすためのものです。このため、資金需要を満たして次の売上があがれば、融資の必要性が無くなり、返済を求められることとなるのです。

 つなぎ融資を受ける際に銀行には、次の売上が上がる見込みなどを確認され、これを踏まえて返済時期が短めに設定されます。次の売上が上がらない限り、更なる資金需要に迫られてしまいますから、安易につなぎ融資に頼ることのないよう、注意しましょう。

金利・手数料が掛かる

 また、通常の融資・事業用ローン以上に金利・手数料がかかる点にも注意が必要でしょう。日本政策金融公庫・メガバンクであればある程度低金利でのつなぎ融資を得られるでしょうが、ノンバンク系のつなぎ融資の金利は、3~18%程度と、高額になりがちです。ノンバンク系のつなぎ融資の方が借入れを容易にできる分、貸倒れリスクを金利に反映させているのです。

 このため、つなぎ融資を受ける際には、普段付き合いのある銀行や、普段から借り入れている取引相手であったとしても、金利・手数料の確認を怠ってはなりません。慎重に検討した上でつなぎ融資を受けましょう。

資金繰りの悪化につながる可能性がある

 最後に、つなぎ融資を利用することで、かえって資金繰りの悪化を招く可能性がある点もデメリットとなります。

 上述のとおり、つなぎ融資は便利な反面、融資期間が短く、かつ、金利・手数料が高くなります。この点を理解した上で、確かな売上の目途を立ててからつなぎ融資を利用しないと、かえって短期間で高額の返済を迫られることとなり、会社の資金繰りが悪化することとなります。

 しかも、つなぎ融資を利用している以上は、通常、会社として相当緊急の資金需要が生じているといえます。このため、つなぎ融資の返済の目途が立たなければ、会社の存続自体が危うい状態といえます。

 このように、つなぎ融資がかえって自社の首を絞める結果となるという注意点は、忘れてはいけません。

 なお、類似の制度として売掛債権を売却して資金を得る「ファクタリング」も存在します。ファクタリングはつなぎ融資と比較して、短時間で資金確保ができる点で有利ですが、あまり高額な資金獲得はできない点・手数料がつなぎ融資よりも高額になる点において不利です。

 つなぎ融資のメリット・デメリットと比較した上で状況に応じて使い分けると良いでしょう。

つなぎ融資を返済できない場合の対応方法

 仮につなぎ融資の返済ができなくなった場合には、そろそろ事業の停止・廃業を検討するべきタイミングに来ていると言わざるを得ないでしょう。

 つなぎ融資は、まさに文字通り、「次の売上を上げるまで」、「不測の事態が解消されるまで」といった短期的な「つなぎ」のための融資となります。このような短期的・一時的な融資の返済に窮するとすれば、それは次の売上があがったり不測の事態が解消したりする見込みが立っていないことを示します。

 このような場合には、事業の回復を図ることは非常に困難といえます。苦渋の決断にはなるでしょうが、破産・倒産を含め、弁護士に早急にご相談をいただく必要があります。

まとめ ~つなぎ融資の返済でお困りの方へ~

 以上のとおり、つなぎ融資についてご説明した上で、つなぎ融資を返済できない場合の対応方法についてご紹介しました。

 つなぎ融資の返済でお困りの方には、上述しましたとおり、事業の停止・廃業をご検討いただく必要があるでしょう。この際には、弁護士の助言・助力を受ける必要が生じます。当事務所には、数多くの法人破産・会社倒産事件を扱ってきた実績があります。ぜひ、お困りの際には当事務所へご相談ください。

 皆さまからのご相談をお待ちしております。