2024年は、運送業者・物流業者にとって、ドライバーの残業時間について厳しい規制がなされるようになったこともあり(いわゆる2024年問題)、苦難の年となったかもしれません。連続的な物価高騰に伴う燃料費の高騰に加え、2024年問題によって運送業界全体が人手不足となり、2024年には運送業の破産・倒産件数が激増しました。この点をニュース記事でご覧になられた方も多いでしょう。

 以下では、運送業の倒産・破産手続の流れと注意点を解説いたします。

運送業・運輸業の倒産・破産が発生する要因

 そもそも、運送業・運輸業を営む会社が倒産・破産する要因としては、以下のような点が挙げられます。

燃料費の高騰

 まず、物価高騰による燃料費高騰が挙げられます。経済状況の変動に加え、政府方針などにより、ガソリン代は恒常的に高騰する状態となってしまいました。燃料費は運送業の主たる原価になりますから、これによって利益率が減少し、経営不振・資金繰り悪化に陥る企業が増えてきているようです。

 資金繰りが悪化してしまうと、人件費をカットしようとする企業も増えます。こうなると、退職による人手不足が加速し、更に利益が下がるという悪循環に入ってしまいます。

人手不足と人件費の高騰

 物価高騰は、人件費高騰も引き起こしています。運送業界に限った話ではありませんが、最近の最低賃金の引上げからも分かるとおり、人件費がどんどん高騰しています。物価が上がっている以上当然の結果ではあるものの、人件費があがって運送業者の負担は増えています。

 しかも、人件費があがっているにもかかわらず、運送業界は長時間労働の問題、苛烈な労働環境などが報道で取り扱われたことなどの影響で、担い手・人手の不足が深刻化しています。

労働時間規制(2024年問題)

 更に、人手不足を個々の従業員の過重労働・長時間労働で補っていた運送業界に対して大きな打撃となる法改正がありました。いわゆる、「2024年問題」です。

 2024年に施行された労働関係法令により、運送業界においても、長時間労働規制・残業代規制が強化されました。これによって、人手不足を個々の従業員の負担によって解決することができなくなったのです。また、労務管理のためのコスト増・労働時間管理の徹底による人材流出という副次的な問題も起きてしまっています。

コロナ融資の返済負担

 更に、いわゆる新型コロナウイルス感染症蔓延の際のコロナ融資・ゼロゼロ融資の返済がスタートし、この負担に追われ始めたことも運送業界を圧迫する事情となっています。

後継者不足

 また、こちらも運送業界に限った話ではありませんが、後継者不足によって経営不振に陥る運送会社も多いようです。労働者のみならず、経営者も高齢化が進んでしまっているといえます。

運送業・運輸業の倒産・破産における注意点

 さて、運送業・運輸業の倒産・破産時には、以下の点に注意が必要です。

従業員への対応

 まずは従業員への対応が必要です。事業停止日に一斉に従業員を解雇することが多いのですが、運送業では従業員が各地へ配送中であることもあります。ぜひ、事前に弁護士にご相談いただき、対応を検討しましょう。

車両や設備の管理

 また、車両・運送設備が適切に保管されたまま破産手続を進められるよう、管理状況に注意が必要です。従業員が車両を持って行ってしまうという事態も起きえますから、鍵の保管が肝要です。

預かり荷物の処理

 更に、預かり荷物の処理方針も、事前に決定しておく必要があります。車両同様に、従業員による横領が発生しないように注意しましょう。

リース契約や賃貸借契約の処理

 事業所の賃貸借契約や、各種機材のリース契約も整理する必要があります。これらの契約書を全てお持ちのまま、弁護士にご相談ください。

許認可の承継

 また、各種許認可をどうするのかも、弁護士と相談して決めておく必要があるでしょう。

未払賃金・未払残業代・解雇予告手当の処理について

 ちなみに、いざ破産という選択を取る場合には、未払賃金・未払残業代・解雇予告手当が残ってしまってお困りの経営者の方は多いです。

 この際には、未払賃金・未払残業代の8割程度は、倒産後、労働者健康安全機構という団体が保障してくれる場合があります。このため会社破産時には、解雇予告手当だけでも支払って賃金を未払いの状態としておき、破産手続の申立を急ぐという対応を取ることが多いです。

 ぜひ、一人でお悩みにならずに、弁護士にご相談ください。

運送業・運輸業の倒産・破産手続きの流れとポイント

破産申立ての流れと関係者の役割

 破産申立ての流れと関係者の役割は、以下のようなものです。

専門家への相談

 まず、弁護士に相談することから全てがスタートします。破産申立ては、会社に関する多数の資料を整理して会社の状況を正確にまとめていくことから始まります。会社の資産状況に加え、破産に至る経緯となった出来事、現在の収支状況まで、細かく申立書に整理していきます。

 この作業には、必ず弁護士が必要となります。ちなみに、会社の倒産には、破産・民事再生・会社更生・私的整理などの多くの手段があります。これらの手段それぞれのメリット・デメリットを弁護士と一緒に検討しながら、どういった手続で会社を閉じていくか決めていくことになります。

破産申立ての準備

 会社として破産の選択を取る場合には、裁判所への破産申立ての準備を進めていくことになります。従業員の解雇・事業停止のタイミングを決定し、債権者への受任通知(弁護士が依頼を受けたことを示す書面)を送付する時期も決めます。

 ちなみに受任通知送付後は、弁護士が債権者対応を行うことになりますから、経営者の時間的・心的負担は減ることとなります。

事業停止の決定

 事前に決めた日程で、事業停止をすることとなります。事業停止日に、同時に従業員の解雇をすることが多いです。

 この際に、取引先への対応(他の業者を紹介する等)をとる、従業員の保険証を回収して離職票を交付するなど、多くの作業を要することとなります。運送が終わっていない物品があれば、その取扱いについても調整が必要となるでしょう。

破産手続開始決定

 その後、裁判所への破産申立書の提出(破産申立て)となります。裁判所は、破産申立書を確認したのち、破産手続開始決定を下します。同時に、会社の破産手続中、会社財産を管理し、その調査を行う弁護士(破産管財人)が選任されます。

 会社代表者には、破産管財人の管財業務に協力し、調査に必要な事情を回答する義務を負うこととなります。また、管財人の業務において、会社の税理士・社労士に協力を仰がれることもありますので、事前にこれらの先生との調整をしておくとスムーズです。

資産の処分と債権者への配当

 破産管財人は、破産手続中に、会社の資産を全て金銭化していきます。会社の資産状況・処分の経過は、債権者集会という裁判所で行われる手続において、裁判所と債権者に報告されることとなります。

 現金化された会社財産は、債権者への配当に用いられます。法人が破産した場合の配当率は数%以下になることが多いです。それでも、一部でも債務を支払った方が、全債権者の利益に繋がると考えられますから、管財人もできるだけ現金化に努めることとなります。

破産手続きをスムーズに進めるためのポイント

 このように、破産手続が流れていきます。こういった手続をスムーズに進めるためには、まず、会社・法人の倒産・破産事件に慣れた法律事務所に依頼することが重要でしょう。破産事件になれていなければ、破産管財人がどのような点に注目して調査をするのか分かりませんから、破産の準備もスムーズに進みません。

 破産管財人がどのように物事を考えるか、どのような調査・現金化をするか、といった点に留意しながら破産の準備を進めることで、いざ裁判所の手続に乗ったあとも、スムーズに手続が流れていきます。当事務所は、こういった点に留意しながら破産手続を進めることができますので、ぜひ、ご相談ください。

運送業・運輸業の企業が破産・倒産を弁護士に相談するメリット

 ちなみに、そもそも運送業・運輸業の企業が破産する際に、弁護士に相談するメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。

法的手続の適切な進行

 まずは、上記のとおり、法的手続が適切に進行するように助言・助力をしてもらえることが挙げられます。やはり専門家に任せるのが一番スムーズです。

債権者対応の一任

 更に、債権者対応を弁護士に一任することができます。

 債権者からの督促は非常に大きなストレスとなります。この対応を弁護士に任せることで、ストレスから解放されるのも大きな利点です。

資産の適切な管理と処分

 また、破産手続を選択する場合には、資産隠し・資産の散逸があってはなりません。この管理と処分を弁護士に任せることで、破産手続の最中にあらぬ疑いをかけられることも防げるでしょう。

従業員対応のサポート

 従業員の解雇の対応等も、弁護士のサポートが必須の作業といえます。会社を閉じる時、最後にはやはり、会社に尽力してくれた従業員に適切な対応を取れると、経営者としても後悔が残らないでしょう。

法的リスクの回避

 上述した以外にも、破産の準備・破産手続中には、法的なリスクが満載です。これらのリスクを適切に回避していくためには、弁護士に寄り添ってもらうことが有用です。

経済的な再スタートの支援

 最後に、経済的な再スタートの支援を得られることもメリットです。

 会社が無くなっても、あなた自身の人生は続いていきます。この時の再スタートのために何が必要で何が役立つか、弁護士はあなたと一緒に考えてくれます。

まとめ

 以上のとおり、運送業・物流業者の倒産・破産時の注意点と手続についてご説明しました。当事務所は、企業・法人の破産に習熟しております。倒産・破産についてお悩みの運送業者の方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。あなたからのご相談をお待ちしております。