コロナ倒産とは
コロナ倒産とは原則として新型コロナウィルスが倒産の要因となったことを当事者が認めて、法的手続や事業停止に踏み切るに至ったものをいいます。
コロナ倒産は、新型コロナウィルスによる直接的な業績悪化による倒産だけを意味するものではありません。コロナ禍による業績悪化に伴い中小企業がいわゆる「コロナ融資(ゼロゼロ融資)」により資金繰りの救済支援を受けたものの、その返済をすることが困難であり、または資金繰りの改善を図ることができなかったことが原因で倒産状態に至ったものも含みます。
日銀はコロナ禍前から債務超過かつ営業赤字の企業を「経営悪化企業」として、デフォルト(債務不履行)に陥る確率を推計していますが、そこにいうデフォルトの定義は、先行き1年以内に、①3ヶ月以上の延滞が発生すること、②要管理先以下に格下げされること、③代位弁済がなされたこと、のいずれかに該当することをいいます。
この「経営悪化企業」は、実質無利子・無担保の「コロナ融資」の返済が本格化して利払い負担が膨らみ、手元資金の水準も低くなることが懸念されております。これらの現実に直面して倒産状態になることも「コロナ倒産」の1つといえます。
コロナ融資とは
コロナ融資とは、新型コロナウィルスによって経済的窮境に立たされた中小企業や個人事業主を対象にして実施された融資をいいます。コロナ融資は、実質無利子・無担保の融資制度であると言われておりますが、融資後3年間に限り利子の支払いを免除されるものであり、4年目以降は利払いが開始されます。
他方、元本についてはその返済を最長5年にわたり先送りできる制度ですが、多くの企業は利子の支払いが開始される4年目以降に元本の返済時期を設定していることから、そもそも業績不振であった中小企業にとっては、コロナ融資の元利返済が苦しい資金繰りを考えるにあたって悩みの種になっております。
また、コロナ融資は各地の信用保証協会からの保証を受けることによる融資制度ですので、元本の支払いが遅滞した場合には、信用保証協会が代位弁済(支払いの肩代わり)を行い、信用保証協会が債務者に対し求償権を取得することとなります。先にも説明しているとおり、信用保証協会による代位弁済がなされること自体がデフォルトと判断されます。
そのため、コロナ融資を受けた当初は何とか資金繰りを繋ぐことができたものの、返済開始が近づき破産に追い込まれた事例も実際に多数出ております。中小企業の中に「倒産予備軍」が増えているとの報道が散見されるのもこのような事実に基づくものです。加えて、コロナ融資の返済開始が始まる時期において、人件費や物価(仕入、資材、燃料費等)の高騰も相まっていることが、中小企業の資金繰りをますます悪化させる要因になっています。
コロナ融資と金融機関の動向
中小企業におけるコロナ融資の返済が重荷となっており、元本の支払いを遅滞してしまうこと(デフォルト)が激増しているという新聞記事がございました。
コロナ融資の返済開始時期は、令和5年7月以降に集中しており、まさに今がその時期なのです。
返済に窮したときは、まずキャッシュフローを改善するのが王道ではありますが、その重要なファクターとして「金融支援」があります。
金融支援とは、何も融資だけではありません。リスケジュール(支払猶予)を始め、金利減免、デットデットスワップ(DDS)、債権放棄など様々な方法があり、これらを総じて「条件変更」と呼称します。
意外に思われるかもしれませんが、金融機関は、通達によって条件変更に応じる傾向が強く、近年の統計では97%という高い割合で何らかの条件変更に応じています。
条件変更の他にも、しっかりとした経営計画を立てることで、更なる融資を引き出せる場合があります。
また、令和4年3月、アフターコロナにおいて、中小企業をいかに支援するかという観点から、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が公表されました。法的な拘束力はありませんが、多くの金融機関がガイドラインに沿っています。
このガイドラインは公開されており、中小企業に対する金融機関の対応方針が記載されているため、重要なバンクミーティングに臨む際は、経営者や経理担当者において斜め読みしておくことが効果的です。
他にも、ガイドラインでは、弁護士を含む外部専門家の知見を得て、金融機関が支援を行う対応が求められるものとされています。
例えば、キャッシュフロー改善を阻害している要因として、法令違反(下請法等)の不当な取引条件を飲まされている場合や、生活費を稼ぐためだけに必要のない残業を行ういわゆる生活残業の慢性化がある場合等、弁護士の知見が有用な場合は多々ございます。
弁護士に経営相談をするイメージの湧かない方が多いとは存じますが、企業法務に特化した弊所ならば、経営相談のニーズにもお応えできます。
コロナ融資の功罪
コロナ融資は、それ自体申請しやすい支援制度であり、かつ実質無利子・無担保により実現できる資金調達方法であったことから、資金繰りを一時的に改善させることは可能でした。しかしながら、コロナ禍前からもともと業績が悪い中小企業が利用するケースも多く、一時しのぎに過ぎなかったと評価せざるを得ない場合があります。現にコロナ融資の開始当初は、倒産件数も少なくなったというデータが出ております。
もっとも、コロナ融資の利払いが開始される4年目以降は、元本の返済も開始される企業が多いことから、資金繰りに窮する中小企業は当然に増えていきます。そのため、実質利子の支払いを要しなかった融資後3年の間に、資金繰り改善のための施策を講じ、綿密な資金計画を立てておく必要がありました。ところが、実際には3年を経過した後も業績の改善を見込むことはできず、かつ、物価高や円安の煽りを受けて、資金繰りの改善どころか、コロナ融資の元利返済に首が回らなくなることが多いのが現状です。
今後、コロナ融資の返済開始を契機として、倒産件数はますます多くなるとの見通しこそ報道されており、どのように返済していくのかを具体的に考えざるを得ない局面に立たされる中小企業は多数存在するといえます。
専門家に相談する必要性
コロナ融資の返済のための資金繰りのため、顧問税理士に相談される中小企業が多いでしょう。専門家の相談は有益です。しかしながら、返済計画の見直しをするにあたっては、人件費の削減やリストラといった法的問題に発展するケースも少なくありません。また、破産や民事再生といった法的手続は、顧問税理士の協力を得ながらも弁護士が行わなければならない領域です。特に、コロナ融資の利払い免除期間において改善できなかった資金繰りを、元利返済開始と同時に改善方向に向けていくのは現実的には至難の業であると言わざるを得ないケースも多いでしょう。
コロナ融資がとりあえず目の前の資金繰りを改善させるための非常手段であった中小企業にとっては、コロナ融資の返済開始によっていよいよ倒産手続を考えなければならないかもしれません。
そのような場合、早期に専門家に相談することが極めて有益です。倒産手続を回避する手段を共に模索することができる場合もありますし、円滑かつ迅速に倒産手続に着手することもできます。一人で資金繰りに悩まず、早期に専門家に相談することは取り得る選択肢を確保するうえでも有益なのです。
コロナ融資の返済でお困りの方は弁護士法人グレイスにご相談ください
弁護士法人グレイスは、これまで実に多くの企業の債務整理や破産手続を取り扱ってまいりました。ただ単に倒産処理件数だけでなく、取り扱ってきた業種も非常に多岐にわたります。また、会社の民事再生手続についても実績・経験を有しております。
加えて、弁護士法人グレイスは600社を超える顧問先企業を有しております。債務整理、清算型手続、再建型手続そのものの経験が豊富にあるだけでなく、様々な業種業態の企業や事業主と顧問契約を締結しており、業種の特殊性等に精通しているからこそ、迅速かつ正確な相談対応が可能となっております。
苦しい資金繰りでお困りの方、会社の清算について専門家の意見を聞いてみたい方は、1人で悩まず、是非、弁護士法人グレイスにご相談ください。